社長インタビュー
代表取締役 長谷川尚哉 Q どうして会社を設立されたのですか? 長谷川:大学を出てから衣料を中心とした世界で仕事をしていましたが、なぜか人々から相談事を持ちかけられることが多く、またその人たちのほとんどが身体的愁訴を持っていることに気がつきました。様々なセラピーなどがある中、国家資格制度になっているはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の免許をとり、地域の人々の健康の保持増進の為に微力ながら努力してきました。しかし、教育の現場で、指導の難しさを感じていた、「人に触れる行為」を解析し、それを指導に用いることで、効率化を図るのとともに現代のこの技術の匠たちの技術を後世に残すことも必要と考えるようになりました。 幸い、ある患者さんを施術しているときに、突然音楽の楽譜がイメージされ、それぞれに私たちの指の力加減がリアルタイムに表示出来れば、そのデータは音声、画像としてより詳細にデータ化出来ることに気がついたのです。 そのアイディアをかたちにし、論文を書くかたわら、特許出願をすることが出来ました。この仕事は言語を超え、世界中で統一的なフォーマットとして「手技の未知なる部分」をかたちにすることが出来ると思ったのです。その方法を啓蒙し、普及することは私にとってのライフワークになると感じて起業設立しました。 Qどうしてデータ化が必要だと思われたのですか? 長谷川:明治期に柳田国男が「遠野物語」著しましたが、近代化にむかってい邁進していた日本の中にある伝統と伝承を紹介することで、民俗学の端緒となったことはご存じの通りです。ちょうど私たちの行う伝統療法である「はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧」などは、中国から伝えられた医療の体系ですが、その技術はとても表現がむずかしく、また技術の向上への後ろ盾もままならない仕組みとなっています。多くの名施術者がこの世界にいると考えても、その技術を客観的に見るにはこれまでは解説と画像しか方法がありませんね?とても重要なのは「力加減」を伝える方法を持たなかったことにあるのだと思います。 ちょうど音楽の楽譜は音程と強弱、抑揚、表現方法を効率的に伝える媒体として世界中で用いられ、数世紀前の作者の意図を探る手がかりになっています。現代の名演奏家もその楽譜に秘められた作者の意図を表現することに力を入れ、また自らの解釈を同じ楽譜の中に表現します。まさに、私たちの仕事は「芸術的」なものなのであると思います。例えば経穴の位置などの情報は相対的な骨度法をもちいて表現されますが、それは被術者の体格などにより位置の特定がむずかしいことからと考えるのがいいでしょう。いちいちその方のツボの位置をセンチで測ってもあまり意味はなさないのです。しかし、基本的な場所は決まっていて、その位置に鍼をしたことでどの様な作用が見られたかを無刺激群と比較する方法をとっています。 ところがあん摩マッサージ指圧に関してはこれまで非常に抽象的な「痛すぎない刺激で数分間」といった刺激を無資格群と比較する方法をとってきました。 データ化は第一に「刺激の総量を再現しやすい環境を作る」ことを目的としてます。我々の世界では刺激量に関する評価に今でも「アルントシュルツの法則」を基本としていますが、この考え方は毒物学に対する研究であり、物理刺激に適用することが可能であるかどうか未検証です。そのため、論文などで刺激量を併記する方法論、指導の現場での力加減の表記法の開発の必要性がありました。私の考案したマッサージスコアはその点を表記方法として補完し、またマッサージスコアリーダーはそれを簡易に取得出来るセンサテクノロジーを用いた機材なのです。 そのように機材を用いてデータをとるということは、現代の名施術者の基本施術情報をアーカイブス化するという目的の他、エビデンスを求められる医学論文の世界で、あん摩マッサージ指圧などの物理療法が、より評価しやすい医学部門への仲間入りを果たすために必要なのだと思っています。 Qデータ化は大きく二つの方向性に分かれるのですね。 長谷川:そうですね。厳密には3つに分かれるのでしょうか? まずひとつは、出来ることなら日本中の患者さんが多くお越しになる施術者の皆さんの技術情報を資料として後世に残したいと思っています。そうすれば、これから学ぶ学生さんやすでに技術をお持ちの施術者の皆さんが、その情報を参考にし、資質向上を図ることが出来るのではないかと思うのです。さらに疾患ごと、愁訴ごとに変化をつける芸術的ともいえる施術者の手技の組み合わせをデータ化することで、より患者さんの愁訴に適合した施術のあり方を模索出来るのではないかと思うのです。 そして、もう一つは実際の教育現場への普及です。教育現場では時限数の問題から、施術順序を教えるにとどまっていることが多く、その大切な力加減を指導したり、評価する方法には指導者が実際に体感するか、あるいは施術自体を目視して評価するしかありませんでした。データを比較すれば、圧力加減、最大圧力などの評価も期待が出来ます。それはすなわち、免許取得時までに一定のレベルの施術者を育む事につながると思います。 最後に、より詳細な施術の実例をペーパーとして残す必要性があります。物理刺激の論文では刺激量が表されていなかったという根本的な問題点をマッサージスコアリーダーは補完してくれます。 Qなるほど。3つの柱で物理療法、あん摩マッサージ指圧をよりよくしようというわけですね。 長谷川:そうです。世界中で行われている物理療法の中には、医療、美容、スピリチュアルセラピーなどがありますが、それぞれの定義化が必要な時代が来ていると思います。特に法的に規定された国においてはその問題もとりざたされてます。最終的に定義化が必要なのは確かですね。 Q最後に、今後の先生の展開はどのようなものになるとお考えですか? 長谷川:そうですね。まずは私の技術情報のDVDを出版しますが、今後より多くのコンテンツを提示し、また多くの方のご協力を得て、この事業がこの領域の人々の資質の向上に役立つことを期待しています。そして、より利用者の皆さんの技術が上達するということが、地域の住民の皆さんへの還元となると思います。 Qありがとうございました。 |